またまた、 年金生活者の投稿事情 : Microsoft 365を使わずにWord形式の論文を仕上げる の、続きである。
Markdownから投稿規定どおりのdocxを作る仕組みは、一通り揃った。
テストには、自分の投稿論文を使う。
何の問題もない。24字×45行、行番号、統計記号のイタリック体、すべて狙いどおりに仕上がっている。
PDF内の文章を選択してコピーし、テキストエディタに貼り付けてみたところ、妙なことに気づいた。
見た目は正常、中身は語順バラバラ
たとえば、
レンジを主指標として採用する理由は,第一に,分布の形状(正規性等)に関する仮定を必要とせず,8〜9名という小標本においても算出・解釈が直感的である点,……
コピー&ペーストすると、
す理由第一分布形状正規性等由関仮定必要せず要8〜9名う本も算出・解関仮定9名正規う本も釈算が……
なんだ、これは。
確か、某事務方から送られてきたPDFファイルから文字列をコピー&ペーストした時にもこんなことがあったぜ。
単語の断片は残っているものの、語順はバラバラ、助詞(の・に・を等)が抜ける。Claudeくんに調べてもらったところ、2つの独立したPDF処理ライブラリで同じ崩れ方が再現したため、特定の抽出ソフトの不具合ではなく、PDFファイル自体(の内部データ)にこの性質があるらしい、とのことだった。
原因として考えられるのは、文字を1文字ずつ絶妙な間隔で配置する(24字×45行にきっちり収めるための字送り調整)組版処理を経ると、見た目の位置は正しくても、PDF内部の「どの順で読むか」という情報の再構成に、抽出ソフトが失敗しやすくなる、というものらしい。見た目の印刷や査読には影響しないが、PDF内の文字列検索や、読み上げソフトでの利用には支障が出る可能性がある、ということである。
なるほど。
長年、コンピュータをいじってきたつもりだったが、実は、PDFの中身には踏み込んでいなかった。だって、めんどくさそうなんだもん。
だから、「正確な複製」ではなく「単純な文字数集計」にした
気になったことがある。
編集委員会事務局は、著者から投稿されるのは(当然ながら)Markdownファイルでも生成用のdocxファイルでもなく、投稿規定どおりに作られた、このPDFファイルそのものである。もし事務局の方が、 刷り上がりイメージ プレビュー のような仕組みを使って、投稿された原稿の分量を確認したいと思っても、手元にあるのはPDFファイルだけ、ということになる。
そこで、「PDFファイルを読み込んで、同じように刷り上がりイメージを再現する」ことができないか、Claudeくんに相談してみた。
すると、技術的には可能だが、正直なところあまり勧められない、という返事だった。Markdownの「# 見出し」のような明確な目印がないPDFから、見出し・段落・引用文献といった構造を「たぶんこうだろう」と推測で組み立て直すのは、そもそも精度に限界があるうえ、今回発見したような文字順の崩れも重なれば、なおのこと当てにならない、という理由である。
もっともな話である。
ならば、構造の複製、再現にこだわらず、目的を変えることにした。
編集委員会事務局が確認したいのは、おそらく「投稿規定の頁数(刷り上がり10頁以内、図表を含む場合15頁まで)に収まっているか」という点だろう。それだけなら、文章の中身を正確に読み取れなくても、文字の総数さえ数えられれば用が足りる。今回見つかった崩れも、語順が入れ替わるだけで文字自体が消えるわけではないので、数を数える目的に対しては、実害がない。
ただの文字数カウンター
というわけで、機能を思い切って絞った、 刷り上がり頁数 概算ツール を作った。やっていることは単純。
- PDFファイルの各ページから、行番号やページ番号らしき数字を除いて文字数を数える
- 投稿規定にある「24字×45行=刷り上がり2段組の1段にあたる」という換算式(1頁2,160字)にあてはめて、刷り上がり頁数を概算する
表紙や要約、図表のページを含めるかどうかは、一覧からチェックボックスで選べるようにしたので、本文だけを対象にするなど、用途に応じて調整できる。
実際に自分の投稿論文PDFファイルで試したところ、表紙ページは224字、本文ページは1,000〜1,130字(投稿規定の1,080字に近い、妥当な値)と、きちんとそれらしい数字が出てきた。全体では約12頁の見積もりで、これは自分の実感(査読でのやりとりの分量)とも大きくは違わない。
単純な機械的処理です
このツールについては、画面にも太字で断り書きを入れてある。これは、PDFファイルから単純にテキストを抽出して文字数を数えただけの、機械的な処理結果である、という一点である。文字の並び順が崩れていることは分かっているし、表のように数字だけが並ぶ箇所では、行番号と紛れて数え落とす可能性もゼロではない。あくまで「だいたいこのくらい」という目安であり、正式な頁数は、編集委員会事務局・印刷所での組版を経て確定するものである、と明記した。
見た目が整っているから中身も正しい、とは限らない。今回はその教訓を、ページ数概算ツールという形で活かせたのではないかと思う。
編集委員会事務局の皆様、もしよろしければお試しいただき、使い勝手について忌憚のないご意見をいただければ幸いである。


